安藤由香里 Droits des l'homme

リーガルクリニック

「難民支援に関する法曹界・地域研究者・市民社会の連携プロジェクト」

1.プロジェクトの趣旨・目的

翻訳の例ぼかし入り

近年、日本において外国人の在留および難民認定申請者が増加傾向にあり、2013年は日本が1982年に難民条約に加入して以来、過去最高の難民認定申請者数を記録した。グローバル化社会のなかで、外国人の出身国は多様化しており、法分野においても様々な地域の知識および多言語の通訳・翻訳を必要とする事例が増える傾向にある。こうした背景の中、研究者が社会の中で果たすべき真の役割を担えるプラットフォームの構築を目指し、本プロジェクトは、地域研究者が法曹界および市民社会と連携し、「法と地域研究」・「社会のなかの法」をつなぐことを趣旨・目的としている。本プロジェクトを通して、研究および教育における国際性の充実発展および日本で国際化に対応した社会貢献事業の展開が期待されるところである。
①地域研究者が国際協力および共生社会に関する研究を推進し、②その研究成果および知識を社会に貢献することで実社会で問題となっている事象を法曹界や市民社会と協働して解決し、③研究者にとって研究のさらなるモチベーションとなる、①~③の正のサイクルを目指している。さらには、真の国際性を備えた若手人材を養成するために、教育プログラムとして、大学および高等教育機関の間を連携し、持てる様々な研究および研究の資源を最大限活用する。

2.社会のニーズ

大阪大学グローバルコラボレーションセンターでは、弁護士の要請に基づいて、既に実験的に「難民インターン制度」を実施している。「難民インターン制度」とは、カナダ・トロント大学のリーガル・クリニックをモデルに構想したものである。すなわち、学生が裁判手続きに必要となる難民の出身国情報の収集およびその翻訳を弁護士のアシスタントとして行う制度である。法テラスおよび弁護士会の法律扶助制度は、まだまだいきわたっていないのが現状であり、多様な国の様々な情報の収集、翻訳・通訳が決定的に不足している。そこで、リサーチ・アシスタント制度を発展させ、本制度を学生のみならず、本格的に研究者にひろげ、組織的に実施するニーズが高まっている。
具体的なニーズとしては、①難民認定手続、退去強制を中心にした外国人事件に関する出身国情報の調査研究、②裁判所に提出する書証の翻訳等の証拠文書作成である。将来的には、「ワンストップ外国人リーガル・ナレッジ・クリニック」の創設を視野に入れている。

実際に翻訳を担ったリサーチ・アシスタントの大学院生にインタビューしたのが以下である。

Q: 難しかった点は何か?
A: 日本および研究対象地域はある程度わかるが、それ以外の地域の法律等を含む基本的な情報をまず把握する必要があった。法律に関しては、最初から仮の訳をいただいたことが良かった。それ以外には日本語文献はなかったため、確認するものがなく、少し不安を持った。日本外務省のサイトもそれ以外の文献にもなかったので、内容を確認しながら基本的な情報を得た。

Q: 遣り甲斐はあるか?
A: 難しかった点がそのまま遣り甲斐であると思えた。まず、他国の情報を把握する作業は、知らないことが色々とあるが、ひとつずつ調べることで、翻訳をする際には役立った。そして、何よりも、自分が行っている研究に関連していると感じた。関連分野での妥当な訳を探すことからはじめる点は語彙力、文章を書く能力、表現力を養うために良かった。研究との関連では、日本にいる外国人に関連した情報、周辺事情、退去強制関連、難民地位認定の実情、本国での実態の情報を頭に入れるだけでも、とても大事だと思った。

3.今後の展開予定

①弁護士等からの要請で、外国人・難民の出身国情報等の情報を提供する適切な研究者・学生の紹介を行う。
②裁判所へ提出する科学的証人鑑定書等の書証の作成を要請する。
③裁判所提出書類は、外国語から日本語に翻訳することが必須である。人材育成を兼ね、学生に翻訳を依頼し、その質を担保するために、研究者が監訳を行う。
④外国人および難民認定申請者との面談・打合せに通訳が必要な場合、通訳者を紹介する。
⑤大学の社会貢献および人材育成目的のため、原則として無償で行うこととする。

プロボノ活動に関心のある研究者および学生の登録をお待ちしています。

ando@osipp.osaka-u.ac.jp

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