Research


私たちは,どこからきたのだろうか。生命と,その誕生の場となった地球は,何から作られたのだろうか。地球だけでなく,生命が存在する可能性のある惑星や衛星を含む太陽系は,どのようにして形成されたのだろうか。

今から約46億年前,塵とガスからなる星間分子雲が自らの重力で収縮し,中心に原始星が生まれ,その周りに塵の円盤が作られた。その中では,塵同士が付着合体し,隕石(小惑星)や彗星などの微惑星が形成された。これら微惑星が互いに衝突合体を繰り返した結果,地球などの惑星が生まれ,太陽系が誕生した。冒頭の問いを解き明かす鍵は,この太陽系の歴史の中で形成されたさまざまな物質に刻まれている。

宇宙に最も豊富に存在する元素は,水素(H),ヘリウム(He),次いで炭素(C),酸素(O),窒素(N)である。Heを除けば,C,H,O,Nからなる化合物の多くは有機化合物とよばれる。これまでの太陽系形成論では,岩石・氷質の塵に基づく説明が主であるが,宇宙に豊富に存在する有機物もまた,太陽系の原材料物質として重要な役割を担っている。そして,地球上の物質から生まれた生命は主にC,H,O,Nから成る有機物でできている。このように考えると,宇宙の有機物は生命の起源に深く関係していることに気がつく。今から約41~38億年前,後期重爆撃期と呼ばれる時期には,彗星,小惑星,惑星間塵が初期地球に降り注ぐと共に,これら始原小天体に含まれる有機物が地球に運搬され,それらの一部は衝突に伴う分解・合成反応に関与し,地球上に生命の原材料がもたらされたのではないかと考えられている。

地球誕生から約40億年前までの時代(冥王代)の記録は,地球にはもう残っていない。しかし,惑星になれなかった微惑星たち,すなわち隕石や彗星には,太陽系が誕生した当時の物質が保存されている。これら太陽系の「化石」を物質分析科学的に調べることで,地球や生命の素となった物質がどのように形成されたのか,そしていかなる有機物が地球にもたらされたのかについて,解き明かすことができる。(「アストロバイオロジー(山岸明彦編)」第6章 宇宙における有機物:太陽系と生命の原材料物質(薮田執筆) )